月間残業時間の日本人平均が「20時間」と聞いて、正直「少なくない?」と思った。「日本=残業大国」のイメージで育ってきたから、50時間くらいが平均のつもりでいた。でもこの20時間、中身を見るとちょっとした罠がある。
日本人会社員の月間残業時間、実態はどうなってるの?
厚生労働省の毎月勤労統計調査(2024年)によると、一般労働者の月間平均残業時間は約20時間。1日あたりに換算するとおよそ57分、つまりほぼ1時間ちょっとだ。
| 月間残業時間 | 全体に占める割合(目安) |
|---|---|
| 0時間(残業なし) | 約30% |
| 1〜10時間 | 約20% |
| 11〜20時間 | 約20% |
| 21〜30時間 | 約13% |
| 31〜45時間 | 約10% |
| 46〜60時間 | 約5% |
| 61時間以上 | 約2% |
この表を見ると、残業がほぼゼロの層が全体の約30%もいる。この人たちが平均値を大きく下に引っ張っているから、20時間という数字が実態より「少なめ」に見える構造になってる。働き方改革の影響で一般社員への残業抑制が進んだことや、パート・契約社員など残業の少ない雇用形態が統計に含まれることも、平均を押し下げる要因だ。
一方、月31時間以上の層は全体の約17%。統計上は少数派なんだけど、「日本の残業文化」の話になったとき真っ先に思い浮かぶのはこのゾーンだったりする。
「月20時間を少し超えたら、実は上位3割」
月21時間以上残業している人は全体の約30%。つまり20時間をちょっと超えた程度で、全国の会社員のなかで「上位3割」に入ってしまう。
「俺ってそんなに残業多くないよ」と思ってる人でも、月25〜30時間こなしてたら上位25%以内にいる可能性が高い。体感と実態がズレやすい数字だと思う。逆に月10時間以下なら、下位50%近辺の話になってくる。うっすら「みんなもっとやってるんじゃないの」と思ってたとしたら、それ実はかなりホワイトな環境に生きてる側だったりする。
ただ、この「体感のズレ」には理由がある。人間は自分の周囲の環境を基準にして「普通」を定義する。職場全員が月40時間残業している環境に3年いたら、それが当たり前になる。逆に定時退社が文化の会社にいる人は、月20時間でも「残業多め」と感じる。統計の数字を見て初めて、自分がいる環境のポジションがわかる。
業種・職種別に見ると平均20時間は"まやかし"になる
全体平均が20時間でも、業種によって実態はまったく違う。
建設業・運輸業・医療介護系は構造的に残業が多い。建設業では月40〜50時間が珍しくない現場も多く、2024年4月からの「建設業の残業上限規制適用」でようやく法的な上限が課されるようになった段階だ。運輸業も同様で、ドライバーの月間残業は以前は80時間超えが当たり前だった職場もある。
対して、IT・情報通信業は二極化が激しい。大手SIerや事業会社のシステム部門では残業管理が徹底されており月10〜15時間程度の層も多い一方、スタートアップや開発会社ではリリース直前に月60時間超えが続くことも普通にある。「IT系だから残業少ない」は完全に幻想で、会社と時期によって振れ幅が大きい。
小売・飲食・サービス業はパートや派遣の比率が高く、これらを含めると統計上の平均が下がる。正社員に絞ると印象が変わる場合が多い。
自分が何業種にいるかによって、「平均20時間との比較」の意味はかなり変わってくる。自分の業種平均との乖離を見るほうが、全体平均を見るよりも意味がある。
年齢・ライフステージで「同じ20時間」の重さが変わる
ライフステージによって残業の重さはまったく違う。
20代のうちは、残業を「経験値を積む時間」として肯定的に捉えられるケースが多い。月30時間の残業も「成長のコスト」として消化できる。体力もあるし、プライベートの制約も比較的少ない。
ところが30代に入って子育てが絡んでくると、同じ20時間でも体感がまるで違う。保育園のお迎えに間に合わない、子供の寝顔しか見られない、休日に疲れて何もできない——残業時間の数字は同じでも、奪われるものの質が変わる。
40代で管理職になると「自分の残業」の概念が変わる。部下の残業を管理する立場になり、自分の残業は「見えにくいもの」になっていく。管理職は残業代が出ないケースも多く(管理監督者の扱い)、実態として月40〜50時間働いていても「残業なし」として統計に上がらない。平均値がさらに歪む要因がここにもある。
「サービス残業」は統計に入らない
もう一つ重要な罠がある。厚労省の統計は「会社が把握している残業時間」が元になっている。申告制の会社で上司に気を遣って残業を少なめに申告している人、タイムカードを打ってから仕事を続けている人、持ち帰り仕事をしている人——これらは統計に反映されない。
日本労働組合総連合会(連合)の調査では、サービス残業を含む実態残業時間は統計より月平均5〜10時間多いという結果が出ることもある。「申告上は20時間だけど、実態は30時間」という人は珍しくない。
自分の本当の残業時間を把握するには、1週間だけでいいので実際に作業した時間をメモしてみるといい。スマホのカレンダーに「業務開始・終了」を記録するだけで、申告値との乖離がリアルにわかる。その数字が今自分がいるゾーンだ。
あ、話が少しズレるけど、ライフステージによって残業の重さってまったく違う気がする。20代のうちは「成長中だし」と思えることもあるけど、30代で子育てが絡んでくると同じ20時間でも体感がまるで違う。それはともかく、まず今自分がどのゾーンにいるかを確かめてみるといい。
この記事の診断は10段階で、LEGENDは月80時間超えのゾーン。「36協定の特別条項が人生の基準値」みたいな人の話だ。Nが平均帯で、Cより下は月10時間以下、定時ダッシュが当たり前の層になってくる。
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SR以上(月30時間超え)だった人へ
残業が多い状態が続いてるなら、一度「年収に見合ってるか」を確認してみる価値はある。残業時間と年収を組み合わせて時給換算すると、思ったよりしんどい数字が出ることがある。
計算は単純だ。月収を実働時間(所定労働時間+残業時間)で割るだけ。月収30万円で月200時間働いてるなら時給1,500円。同じ30万円で月160時間なら時給1,875円。この差が積み重なると、5年・10年でかなりの差になる。転職活動じゃなくていい。まず市場で自分がいくらの人間なのかを知るだけで、次の交渉や選択肢の解像度がぐっと上がる。
C以下(月10時間未満)だった人へ
残業が少ないのは、環境がホワイトか、自分でうまく働き方をコントロールできてる証拠でもある。この状態を起点に年収を上げるには、スキルアップか職種変更が現実的なルートになる。今の会社での給与相場と転職市場の相場、一度比べてみると今の会社の立ち位置が見えてくる。残業が少ないまま年収を上げることは不可能じゃない。むしろ「定時で帰れて年収高い」ポジションは存在するし、それは職種・業種の選択で手が届く範囲にある。
