50代男性、と聞いてどんなイメージを持つだろうか。キャリアも積んで、収入もそれなりあって、老後の準備も万全——みたいな感じ?

実は、貯蓄がほぼゼロという人が4〜5人に1人いる。

これが金融広報中央委員会の2024年調査が出してきた答えだ。「え、そんなに?」と思った人、正直ここから読んでほしい。

50代男性の貯蓄、リアルな数字

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、二人以上世帯の50代の平均金融資産は 1,147万円。

一見すると「さすが人生の働き盛り、ちゃんと貯めてる」と思える数字だ。

でも。

中央値は 300万円前後。

この差がすごい。平均を引き上げているのは資産を大量に持つ上位層で、大多数の「普通の50代」はそこまで届いていないのが実態だ。

貯蓄額割合(目安)
ゼロ約22%
100万円未満約7%
100〜300万円約9%
300〜500万円約8%
500〜1,000万円約14%
1,000〜2,000万円約16%
2,000〜3,000万円約8%
3,000万円以上約16%

約3割が500万円未満。そして上位2割近くが2,000万円超。二極化の構造がはっきり見える。

「平均1,147万円」という数字は、一部の大金持ちが引き上げた結果であって、自分が平均以下でも「標準」に近い可能性がある。

ちなみに単身世帯になると状況はさらに厳しくなる。同調査では単身の50代男性の中央値は100万円台という数字も出ており、二人以上世帯と比べて明らかに下振れしている。パートナーの収入や節税効果が積み重なることで、世帯単位での資産形成は有利に働きやすい。単身でここまで積み上げてきた人は、同じ50代の中でもかなり頑張っているほうだ。

「老後2000万円問題」との現実的なギャップ

ちょっと思い出してほしい。

2019年に金融庁が試算して大炎上した「老後に2,000万円が必要」という話。あれから7年が経って、じゃあ50代男性が実際にそこまで準備できているかというと——中央値を見れば明らかだ。

約7割の人が1,000万円以下で、老後のスタートラインに立っている。

正直、しんどい数字だと思う。でも、ここで落ち込むより「今から何ができるか」を考えた方がいい。なぜなら50代は、収入が人生で最もピークに近い時期でもあるから。住宅ローンが終わりつつあって、子育てのピークも過ぎて、手元に残せるキャッシュが増えやすいタイミング。平均値と中央値の差が大きいのも、ここで差がついた結果——つまり同じ出発点でも、この時期の動き方次第で結果が変わる、ということでもある。

そもそも「2,000万円」という数字自体も見直しが必要になっている。物価上昇が続く2026年時点では、同水準の生活を維持するために必要な額は実質的に上がっている。金融庁の試算は月5.5万円の赤字を前提にしていたが、光熱費・食費・医療費の上昇を加味すれば月7〜8万円のギャップが生じるケースも珍しくない。2,000万円は「最低ライン」であって「安心の数字」ではない、と理解しておく必要がある。

50代前半と後半で状況はかなり違う

あ、話がずれたけど、年齢によってもかなり状況が変わる。

50代前半(50〜54歳)は、子供の大学費用・住宅ローン残債が重なるケースが多く、「稼いでいるのに手元に残らない」という構造になりやすい。50代後半(55〜59歳)は大きな出費が一段落して、資産形成の最後の追い込みができる期間に入る。

同じ「50代男性」でも、前半か後半かで戦略はまったく違う。

具体的に言えば、50代前半で子供の教育費がピークの人は「積み立てを増やす」より先に「固定費を削る」の優先度が高い。通信費・保険の見直しだけで月2〜3万円の余白ができるケースは多い。一方、50代後半で子供が独立した人は、その分のキャッシュをそのまま投資に回すのが最も効率がいい動きだ。生活水準を上げるより先に、「ライフコストが下がった分を全部積む」という発想に切り替えた人ほど、60歳手前で大きく差がついている。

そして差がつく最大のポイントが「何に積んできたか」。

預金だけの人と、NISAやiDeCoを使って運用してきた人では、同じ金額でも老後に引き出せる総額がかなり変わってくる。たとえば30歳から月3万円を預金で積み続けた場合、50代で元本だけなら720万円。同じ金額を年利4%で運用していた場合、複利効果で1,000万円を超えている。この差は「知っているかどうか」だけで生まれる。50代はiDeCoの掛け金上限が拡充された恩恵を受けられる世代でもあって、使いこなしているかどうかで10年後の結果が変わってくる、というのが実態だ。

同世代・他世代と比べるとどう見える?

貯蓄の話をするとき、50代だけを切り取って見ても判断しにくい。他の世代と並べると、位置関係がよりはっきりする。

40代の平均金融資産は約800万円(中央値200万円台)。60代は平均1,600万円超(中央値700万円台)。50代の300万円という中央値は、40代から60代へ向けての「移行期」のど真ん中にあって、ここで積み上げられるかどうかが60代の水準を決定づけていることがわかる。

言い換えると、60代で中央値700万円台にいる人の多くは、50代でちゃんと積んできた人たちだ。逆に50代で貯蓄ゼロのまま60代に入ると、年金以外の資産がほぼない状態で老後を迎えることになる。年金の平均受給額は月15万円前後(厚労省2024年)で、夫婦世帯でも月に25〜28万円程度の生活費を考えると、貯蓄なしでは毎月赤字が確定する構造になる。

50代の貯蓄額は「今の豊かさ」ではなく「老後の確率」を映す数字だ。

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診断後、50代がやるべき具体的な一手

まず、残り時間を逆算してほしい。

65歳定年として、50歳なら15年、55歳なら10年ある。毎月5万円積み立てると、運用なしでも10年で600万円になる。月10万円なら1,200万円だ。「今からじゃ遅い」は思い込みで、まだ十分に変えられる余地はある。

ただ、やみくもに積み立てるより、まず確認すべきことが3つある。

  1. iDeCoの掛け金を上限まで使っているか 会社員なら月2〜2.3万円が上限(企業年金の有無で変わる)。所得控除で節税しながら積める制度を、使わないのはもったいない。自営業者や個人事業主なら月6.8万円まで積めて、節税効果はさらに大きい。

  2. NISAの成長投資枠を活用しているか 年240万円まで非課税で投資できる。50代からでも10〜15年はフル活用できる。インデックス投資(全世界株や米国株ETF)は個別銘柄より値動きが緩やかで、50代の資産形成に向いている。

  3. 退職金の見込みを把握しているか 退職金を含めると「実は2,000万円超える」という人もけっこういる。会社の規程を今一度確認しておく価値はある。特に確定給付型か確定拠出型かで受け取り方も税の扱いも変わるため、今のうちに人事部に確認しておくのが賢い。

もう一点、50代で見落としがちなのが「保険の整理」だ。30代に加入した死亡保障がそのまま残っていて、毎月2〜4万円の保険料を払い続けているケースがある。子供が独立した後は保障額を減らしても問題ないことが多く、見直すだけで年間30〜50万円の余白ができる人も珍しくない。その分を積み立てに回せれば、10年で300〜500万円の差になる。

現状を正確に把握してから動くのが、50代の一番効率のいい動き方だ。診断結果で自分の立ち位置を確認して、上の3つを一個ずつ潰していく——それが今できる最初の一手だ。

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